DLMP®を使用したHalar®フッ素重合体の加工

レーザー切断、マーキング、彫刻に適したHalar®の例

関連する名称:

Norton® ECTFE、Symalit® ECTFE

化学名:

エチレン クロロトリフルオロエチレン共重合体(最も一般的)、ポリ(1-chloro-1,2,2-trifluorobutane-1,4-diyl)、ポリ(ethene-co-chlorotrifluoroethene)

メーカー:

Quadrant Plastics
Saint-Gobain High Performance Films
Solvay Specialty Polymers®

Halar®は、エチレンと塩化三フッ化エチレンの熱可塑性共重合体である、エチレン クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)の商品名です。Halarは、ソルベイスペシャルティポリマーズ社によって開発され、販売されています。

Halarは、高耐腐食性と超低透過性を要する用途に便利です。高温高濃度の環境下でも、Halarは、酸、溶剤、酸化剤、腐食性物質に対して優れた耐性を発揮します。また、Halarは熱や火に強く、電気絶縁に最適な特性を備えています(例:高抵抗性、低誘電性)。

Halarの本来の色はオフホワイトですが、場合によっては黒でもご利用いただけます。シート、ロッド、織り目の粗い布としてご利用いただけます。

Halar®とDLMP®技術

耐熱性と耐酸化性に優れた材料特性を持つHalarは、DLMP(デジタルレーザー加工)技術に対応できます。これらの特性がDLMPの結果に及ぼす影響については、以下のセクションで詳しく説明します。

レーザーエネルギーとHalarとの相互作用によって生じる効果は、材料のアブレーションと材料改質です。Halarの場合は、レーザー切断、レーザー彫刻、レーザーマーキングの加工を適用できます。レーザーエネルギーで材料を除去して、材料を切断、彫刻、またはマーキングすることができます。または、レーザーエネルギーで表面の特性を変更して、目に見えるマークを形成することができます。これらの加工については、それぞれ以下のセクションで説明します。

詳細については、当社のレーザー加工に関するホワイトペーパーをご覧ください。

レーザー切断されたHalar®シートの切り口ロッド上にシリアル番号を表面にレーザーマーキングしたHalar®レーザー切断されたHalar®の厚手の編み上げ状絶縁チューブファイバーレーザーで2Dコードを表面にレーザーマーキングしたHalar®シリアル番号を高品質レーザーマーキングしたHalar®

材料のアブレーション

材料のアブレーションとは、材料を取り除く物理的なプロセスのことを指します。材料を表面の上から下まで完全に除去するか、材料の上部から指定された深さまで材料を部分的に除去します。

Halarは、CO2レーザーのエネルギー(波長=10.6μm)を完全に吸収します。Halarがレーザーエネルギーを吸収すると、光エネルギーを分子振動(熱)にすばやく変換します。十分な熱が発生すると、Halarは急速溶融して気化し、分子構造のさまざまなポイントで分子結合が分解します。レーザー光路にある材料は除去され、蒸気が発生しますが、裁断くずが出たり変色することはありません。CO2レーザーは、主に、Halarのレーザーアブレーションに使用されます。

レーザーの焦点または光路のすぐ外側にある材料は一部の熱を伝導しますが、完全かつ徹底したアブレーションを行うには不十分です。この領域は、しばしば熱影響域(HAZ)と呼ばれます。Halarの場合、溶融温度が高く、隣接面は溶融することなく伝導した熱に耐えることができるため、HAZを最小限に抑えることができます。DLMPの概要で述べたとおり、材料の厚さに最適な出力を選択することで、熱影響を最小限に抑えることができます。

材料特性の改質

先ほど述べたように、10.6μmのCO2レーザーは、切断や彫刻を目的とした材料の除去にとても有効です。しかし、CO2レーザーはコントラストを生成するのに効果的ではありません。コントラストを生成するには、ファイバーレーザーが適しています。Halarは、1.06μmのファイバーレーザーエネルギーも吸収して熱に変換します。表面に適用する出力を厳重に制御すれば、材料を除去せずにコントラストを生成できます。その結果できるマーキングは黒になります。この加工は炭化と呼ばれることがあり、残留物や粉末を残しません。

レーザーマーキング(表面)

Halarの表面にファイバーレーザーでマーキングすることで、番号、テキスト、バーコード、写真などの情報を伝達できます。マークは恒久的で、ほどよいコントラストが得られるため、印字方法に代わる魅力的な方法となります。この加工は、人も機械も判読可能な情報の作成に最適です。

シリアル番号を表面にレーザーマーキングしたHalar®

複合加工

複数の加工をHalarに適用することができます。材料を動かしたり再固定したりする必要はありません。画像の例は、複数の加工を組み合わせた例(シートストックからHalarをカットし、チャネルを材料に彫刻し、シリアル番号を表面にマーキングする)を示しています。これらの加工の順番は、オペレーターが制御できます。

レーザー切断と彫刻を施し、シリアル番号を表面にレーザーマーキングしたHalar®

環境、衛生、および安全に関する考慮事項

レーザーと材料間の相互作用では、常にガス状流出物や粒子が生成されます。CO2レーザーを使用したHalarのレーザー加工では、複合ポリマーの化学的性質により、ガスを含む多様なフッ素や塩素が生成されます。中でも注目すべきは、この流出物に含まれる塩酸とフッ化水素です。これらのガスや粒子は、政府規制に従って外部環境に排出する必要があります。あるいは、流出物を最初にろ過システムで処理してから外部環境に排出することもできます。Halarは高熱への耐性がありますが、十分なレーザーエネルギーが加えられれば、発熱反応を引き起こす場合があります。そのため、Halarのレーザー加工を常に監視する必要があります。