Teflon®

デジタルレーザー加工(DLMP®)技術を使用したTeflon®の加工

ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、一般にTeflon®という商品名で知られています。非固着性、撥水性、耐薬品性、耐温度性などの特性が最も注目される合成フッ素重合体です。その優れた特性のために、Teflonは商業、産業、および航空宇宙用途で、最も要求の厳しい環境にも適します。


分子構造をつくる炭素・フッ素結合により、Teflonはフッ化水素酸を含む強力な化学物質に対しても耐性を持っています。また、Teflonは、非常に高い融点(327℃)と低温(-79℃まで)での柔軟性を組み合わせ持った非常に高い誘電強度を持っています。


Teflonには多くの形状や色があります。シート、チューブ、ロッド形状が最も豊富です。最も一般的な色は白と黒です。通常、Teflonは可塑剤または充填剤が加えられていない、化学的に不純物がない純粋です。

関連する名称

Teflon®、Fluon®

化学名

PTFE、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ジフルオロメチレン)、ポリ(テトラフルオロエテン)、ポリ(1,1,2,2-テトラフルオロエチレン)

製造業者

DuPont、AGCケミカルズ

Teflon®とDLMP®技術

例えば高融点温度および架橋結合がないなどのTeflonの材料特性は、素材の形状または外観を変質するためにレーザーエネルギーを利用するデジタルレーザー材料加工(DLMP)技術と高い互換性があります。Teflonとのレーザーエネルギー相互作用の効果は、素材のアブレーションおよび材料変質です。Teflonでは、レーザー切断、彫刻およびレーザーマーキング加工が可能です。レーザーエネルギーを使い、素材の切断、素材の彫刻やマーキング、または表面特性を変化させて可視化されたマークを作成することもできます。

レーザー加工白書

ギャラリー

素材のアブレーション

アブレーションは素材を除去する物理的なプロセスです。素材は上面から底面まで完全に除去されるか、または材料の上部から特定の深さまで部分的に除去されます。


Teflonは、CO2レーザーエネルギー(波長=10.6μm)の優れた吸収剤です。Teflonがレーザーエネルギーを吸収すると、急速に光エネルギーを分子振動(熱)に変換します。十分な熱があれば、Teflonは、ベース単位の著しい劣化なしで、繰り返し単位間の結合がきれいに破壊される「開裂」を受けます。レーザーパス内にある素材は、蒸気と微細なTeflon粉体にきれいにアブレーションされます。


このような理由から、Teflonのレーザーアブレーションには、CO2レーザーが一般的に採用されています。レーザーのスポットまたはパスのすぐ外側の材料は熱を伝導しますが、それでは完全かつ徹底したアブレーションには不十分です。熱の影響を受けるこの領域は、熱影響部またはHAZと呼ばれています。Teflonの場合、融点が高いので実質的にHAZは生成されません。つまり、隣接する表面は、溶融または沸騰することなく伝導熱に耐えることを意味します。熱影響は、素材の所定の厚さに対して適切なレーザー出力を選択してあげることで最小限に抑えられます。

レーザー切断

レーザー切断は、決められたパスに沿って素材を表面から底面まで完全除去をして分離します。Teflonはその高い溶融温度と元来の純度により、バルク材料から清浄にアブレーションされます。Teflonをレーザー切断した結果生じるエッジは滑らかで、熱的加工と関連して時々発生する変色もありません。Teflonのレーザー切断では、乾いた布で簡単に除去することができる、PTFE粒子の微細なパウダーが生成されます。ここに示されている能力は、複雑で密接配置の切断であっても、ほぼすべての形状にまで広げることができます。

ひし形にレーザー切断された黒色Teflon®
白色Teflonからレーザー切断された0.25インチ厚のひし形

レーザー彫刻

レーザー彫刻とは、素材を表面から特定の深さまで除去する加工です。これは、レーザー変調を厳密に制御することで可能になります。レーザーエネルギーを連続的に変化させることにより、テクスチャ、写真、そしてテキストや数字などの情報用にレーザー彫刻を使用することができます。Teflonは、変色や融解なしできれいに彫刻することができます。再度言いますが、その高い溶融温度と元来の純度によります。

ひし形にレーザー切断された白色Teflon®
レーザー彫刻で作製したチャンネル

レーザーマーキング(深)

レーザーエネルギーを使用して、人も機械も判読可能なIDまたは情報(バーコード、日付/ロットコード、シリアル番号、または部品番号など)を材料に入れる場合、加工として考えられるのは、深さのあるレーザーマーキング、またはレーザー深さマーキングですが、これらは本質的に材料に彫刻します。レーザー深さマーキングでTeflonがもっていた長年の課題を克服しました。Teflon部品を識別するためにインクベースの方法を使用すると、インクが表面に簡単には接着しないことから、常に失敗してしまいます。DLMP技術では、汚れやすいインクを取り扱うことなく、永久的な彫刻を生成することができます。

シリアル番号が深さのあるレーザーマーキングされた黒色Teflon®
黒色Tefonに適用されたレーザー深さマーキングを使用するフォントサイズ24のシリアル番号

材料の変質

既に述べたように、Teflonは、10.6μmのレーザーエネルギーを容易に吸収し、きれいにアブレーションをおこないます。しかし、CO2レーザーは、コントラスト生成においてはあまり効果的ではありません。1.06μmで動作するファイバーレーザーも、純粋な白色Teflon上でのコントラスト生成ではあまり効果的ではありません。実際、Teflonはこの波長では光拡散器として使用されてます。しかしながら、黒いTeflonではコントラストを生成する方法があります。黒色のTeflonを生成するために使用されるカーボンブラック染料は、ファイバーレーザーのエネルギーを非常によく吸収します。このエネルギーは熱に変換され、ポリマーマトリックスによって伝導されます。適切なコントロール下では、ポリマーは沸騰し始め、より表面積が大きくなります。追加の表面が屈折し、黒いTeflon上に高いコントラストのオフホワイトマークが生じます。漂白またはフォーミングとも呼ばれるこのプロセスは、残留物や粉体を残さず、さらにマークキングされたエリアはTeflonの特性を保持します。

レーザーマーキング(表面)

黒色Teflonにファイバーレーザーでマーキングすることで、番号、テキスト、バーコード、写真などの情報を伝達できます。マーキングは恒久的で、ほどよいコントラストが得られるため、印字方法に代わる魅力的な方法となります。例では、黒色Teflonの表面にマーキングされたシリアル番号を示しています。

シリアル番号が表面にレーザーマーキングされた黒色Teflon®
黒色のTefonの表面にマーキングされた、フォントサイズ24のシリアル番号

複合加工

複数の加工をTeflonに適用することができます。材料を動かしたり再固定したりする必要はありません。画像の例は、複数の加工を組み合わせた例(シートストックからTeflonをカットし、材料にひし形を彫刻し、シリアル番号を表面にマーキングする)を示しています。彫刻とマーキングは常に、複合加工での切断前に行います。

シリアル番号を表面にレーザーマーキングした黒色Teflon®
レーザー切断およびマーキングされた黒色Teflon

環境、健康および安全に関する考慮事項

レーザー素材の相互作用は、ほとんどの場合、ガス状流出物や微粒子、またはその両方を発生します。レーザーアブレーション加工を使用する場合のTeflonの主な分解メカニズムは開裂です。これは、素材からより小さなTeflon粒子がアブレーションされ、微細な白色粉末に沈着します。フッ化カルボニル、フルオロフォーム、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロプロピレンなどの気相流出物も存在します。これらのガスおよび微粒子は、政府の規制に従った経路を通じて外部環境に排出されなければなりません。あるいは、最初に流出物をフィルターシステムで処理してから外部環境に排出することもできます。一部の素材は、レーザー加工中に可燃性の副生成物を生成する傾向があります。したがって、レーザー加工は常に監視されていなければなりません。